今月はちょっと面白い話。皆さんは「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」をご存じでしょうか? 完全に光を遮断した“純度100%の暗闇”の中で、グループ(8名程度)で入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもと、白杖を持ち、中を探検し、「五感」の気付きや「コミュニケーション」などを楽しむ1988年にドイツで発案されたソーシャルエンターテインメントで90分間の真っ暗な視覚の無い空間と時間を過ごします。最初参加者の多くは見えない事で不安になり、うまく動けなく、倒れたら死ぬのではと思う人もいるとか。当然迷子になる人がいます。するとアテンドが「こっちだよ」と言ってリードしてくれるので安心です。・・・で終われば何の事もないのですが、驚くのは迷子になったと何も言わなくてもアテンドの人は気がつくそうです。それは「迷子の音」だという。迷子の人は不安になっているから、白杖を普段よりもコツコツ小刻みに突くらしい。それに歩幅も小さくなって、細かく歩くようになる。足音も小刻みになるから、それでわかるんだと言う。8人の似たような音を聞き分けた上での凄い感覚ですね。また参加者に声が届きやすいようにアテンドは暗闇の中を後ろ向きに進むそう。彼らは耳と肌の感覚だけで、天井の高さが何メートルなのかがわかるし、お風呂の水の溜まり具合も隣の部屋から分かると言います。何だか「じゃあこれこれは?」「いや、さすがにそれはムリ!アハハ」等の笑い話も想像できます。
興味深いのは一つの感覚や機能が失われた時、人はどうなるのかと言う事です。例えば記憶が失われた時人はどうそれを補うのか。記憶障害は認知症の代表的な症状の一つですが、それは補えるのか混乱を招くだけなのか。やはりそれはなってみなければ分からないし、なっている人が説明できなければ言動でその状態を分析して想像し理解するしかありません。認知症ケアスタッフが一般には感知できない周辺症状の微妙な差で今の利用者さんの気持ちを理解する事があって欲しいなと思うし、スタッフ自身が自分でも気がつかない何かがあれば良いなと思います。
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- こうえい会・施設長の一言 2017年8月号より[Vol.002]